市街化区域・調整区域と農地転用・建築許可申請

都市計画と許可

住宅を建てる際に、自分の土地であれば、どこで好きなように建ててもいいかというと、そうではありません。
家を建てたいエリアごとに、都市計画が定められており、市街化区域・市街化調整区域などに分けられ、さまざまな規制がされています。
また、都市計画法・建築基準法という法律により、建築許可申請や建築確認申請が必要となります。

順番としては、
1.市街化調整区域か否かを調べる…都市計画法
市街化調整区域内の場合は、建築許可の見込み検討(既存宅地・分家住宅等)

2.農地か否かを調べる…農地法
農地の場合は、上記1のほかに、農地転用許可の見込み検討

3.青地か否かを調べる…農振法
青地(農振農用地)の場合は、上記2のほかに、農振除外の見込み検討

4.接道その他の要件を調べる…建築基準法ほか

となります。

手続きの順番としては、農振除外申請から行い、
その後、建築許可と農転許可を申請していきます。
なお、建築許可と農転許可は、ワンセットの同時許可になるため、両方の要件をクリアしていなければ、どちらの許可も下りません。

そして、これらの許可が下りたら、市街化区域内における住宅建築の場合と同様に、建築確認申請をしていきます。

都市計画区域内と都市計画区域外

そもそもまず、市街化調整区域か否かの前に、都市計画がつくられている都市計画区域内か、都市計画区域外か、という大きなくくりがあります。
みなさんが住んでいる地域は、多くが都市計画区域内で、その中でも市街化区域というエリアに住んでいる方が大半です。
都市計画区域外は、山のほうなど、田舎に行くと都市計画区域外というエリアになります。

都市計画区域の割合

日本の国土における都市計画区域の割合としては、都市計画区域内が約27%。
そのうち、市街化区域が約4%・市街化調整区域が約10%・非線引き都市計画区域が約13%です。
都市計画区域外といえるエリアは、約74%です。
人が住んでいるエリアは、日本国土のうちの約4%の部分に、大半の人が住んでいるということです。

都市計画区域内

市街化区域(しがいかくいき)

・建築許可申請 不要(都市計画法)
・建築確認申請 必要(建築基準法)

市街化区域とは、都市計画区域内のうち、すでに市街地となっている区域や、今後優先的に市街化を行っていくエリアのことです。
市街化区域の場合、用途地域があります(住居専用地域、商業地域など)。
用途地域によって、建ぺい率・容積率が異なります。

市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)

・建築許可申請 必要(都市計画法)
・建築確認申請 必要(建築基準法)

市街化調整区域とは、都市計画区域内のうち、市街化を抑制して、環境を維持していこうというエリアです。
調整区域の場合は、原則として用途地域を定めない取り扱いとなっており、用途地域がありません。
調整区域の場合、エリアによって、建ぺい率・容積率が決まっている場合もあります。
(建蔽率60%・容積率200%など)
また、農地転用の関係で、逆建ぺい率が求められる場合もあります。
(建ぺい率20%以上や22%以上など)

非線引き区域(ひせんびきくいき)

・建築許可申請 不要(都市計画法)
・建築確認申請 必要(建築基準法)

非線引き区域とは、都市計画区域内で、市街化区域でも調整区域でもない、区分がされていないエリアです。
以前は、未線引き区域と呼ばれていました。
非線引区域の場合は、建築許可申請は不要です。
岐阜県の東濃エリアなどは、非線引き区域が多くあります。

都市計画区域外

・建築許可申請 不要(都市計画法)
・建築確認申請 不要(建築基準法)

都市計画区域外とは、都市計画法の規制の範囲から外れるエリアのことです。
都市計画が定められていないということで、田舎が多く、都市計画法の建築許可申請が不要になるほか、一定の建築物(たとえば一般的な木造2階建ての住宅など)であれば、建築確認申請も不要になります。
(ただし、この場合でも工事の届出が必要であり、建築基準法を無視して自由に建築ができるという趣旨ではありません)

※上記は、原則的な取り扱いです。例外もありますのでご注意ください。
例えば、都市計画区域外であっても、順都市計画区域にあたる区域内で開発行為を行うときは、開発許可が必要になるケースがあります。

市街化調整区域と建築許可

市街化調整区域は、市街化を抑えていくという地域になりますので、原則として建物を建てることができません。
そこで、建物を建てる際に、建築許可が必要となります。
まずは役所と事前相談を行い、許可の見込みがあれば手続きを進めていくことになります。
建築許可の分類としては、以下のとおりに分けられます。

建築許可が不要の建築物

以下の場合は、そもそも建築許可・開発許可が不要となります。

・農家住宅
・公益施設
・用途変更のない増改築
・旧住宅地造成事業区域内で行う建築
など

都市計画法34条に該当する建築物で開発行為のないもの

都市計画法43条 建築許可申請

許可

建築確認申請

都市計画法34条に該当する建築物で開発行為のあるもの

都市計画法29条 開発許可申請

許可

着手届・都市計画法37条建築承認・工事完了届・検査済証・完了公告
都市計画法41条建築物の特例許可申請
都市計画法42条予定建築物以外の建築等許可申請

許可

建築確認申請

なお、上記のフローのほかにも、接道があるかなどもしっかりチェックして、必要に応じて土地の分筆登記を行ったりする必要があります。

開発許可と建築許可

開発許可と建築許可について、違いや要件もさまざまな種類があります。

開発許可とは

開発許可とは、開発行為や建築行為を行う際に必要となる許可のことを開発許可といいます。
開発行為とは、建築物を建築・建設する際に、区画を分割したり、道路を設置したりすることです。
すなわち、土地の区画の変更する行為が、開発行為です。
この開発行為を行う際に、開発許可という許可が必要になります。

建築許可とは

建築許可とは、市街化調整区域での建築を行う場合に、開発行為が伴わない場合に必要となる許可です。
住宅建築の際の許可申請手続きで、もっともよく聞く許可手続きになります。
一般的には、行政書士が建築許可申請を行います。

建築許可の要件

建築許可の許可基準は、都市計画法第34条各号に規定するもののほか、同条に基づいて各都道府県または市町が定める開発審査会基準によるものがあります。
たとえば、愛知県開発審査会基準における代表的なものとして、既存宅地(17号)や、分家住宅(1号)による許可が挙げられます。

建築許可:既存宅地(きぞんたくち)

市街化調整区域では、住宅の建築が制限されますが、要件を満たす場合には建築することができます。
不動産業者さんがよく言われる「既存宅地(きぞんたくち)」とは、既存の宅地における開発行為・建築行為のことです。

既存宅地の要件としては、いくつかありますが、特に、
・土地の登記事項証明書の地目が宅地であるもの。
ただし、登記日付が昭和50年4月1日以降であり、原因日付が市街化調整区域決定の日(愛知県の場合:昭和45年11月24日)より前に遡及しているものを除く。
という点がポイントとなります。

つまり、愛知県の場合、
宅地への地目変更の原因日付が、市街化調整区域決定日である昭和45年11月24日より前であり、かつ、
地目変更登記が、昭和50年4月1日までに完了しているものでなければならない ということです。

既存宅地については、愛知県の開発審査会基準第17号の運用基準に該当し、一定の要件を満たす場合は、原則として開発審査会の議をクリアすることになり、建築許可がおりることになります。
※開発審査会基準第17号付記:本基準に該当するもののうち、開発区域の面積又は敷地面積が3000平方メートル以下でかつ、建築物の高さが10メートル以下のものは、開発審査会の議を経たものとみなす。

建築許可:分家住宅(ぶんけじゅうたく)

市街化調整区域で家を建てるための方法として、まずは既存宅地を検討します。
しかし、既存宅地の要件がない場合は、いわゆる「分家住宅」(ぶんけじゅうたく)を検討します。
農家の二・三男が分家する場合の住宅等についての規定です。

市街化調整区域において、継続して生活の本拠を有する農家において、その世帯の分化発展の過程で必要とする住宅の確保のためのものです。

分家住宅については、愛知県の開発審査会基準第1号の運用基準に該当し、一定の要件を満たす場合は、原則として開発審査会の議をクリアすることになり、建築許可がおりることになります。
要件として、開発区域の面積(または敷地面積)が500㎡以下という要件もあるため、ケースによっては、確定測量・分筆登記が必要になるケースもあります。
※開発審査会基準第1号付記:本基準に該当するもののうち、開発区域の面積又は敷地面積が500平方メートル以下(路地状部分を除く)のものは、開発審査会の議を経たものとみなす。

建築許可が不要な場合

建築許可がいらないケースとしては、よくあるのが、農家住宅を建てる場合などは、建築許可が不要です。
また、すでに家が建っている場合など、建て替え要件があれば、建築許可が不要な場合もあります(建築確認申請は必要です)。

建築許可については、まずは宅地かどうか(既存宅地の要件を確認)、そして、上に建物が建っているかどうか(建替え要件を確認)という流れで進めていくことが多いでしょう。

農地の場合の手続き

農地転用(農地法の許可)

家を建てようとする土地が農地の場合は、上記の建築許可申請のほかに、農地転用の手続きが必要となります。
この農地転用の手続きも、行政書士が担当する分野になります。
農地転用については、農地法に規定されており、

農地法第3条 農地のまま所有権を移転する場合
農地法第4条 農地以外に転用する場合(自己転用)
農地法第5条 農地以外に転用する目的で所有権を移転する場合

というように、取引の態様によって、適用される法律が異なります。

農振除外・青地と白地

農地の話になると、よく出てくる文言が、青地(あおじ)と白地(しろじ)です。

青地とは

農地で言う青地とは、「農業振興地域内農用地区域内農地」のことです。
一般的には、「農振農用地」または「青地」(あおぢ・あおち)と呼ばれています。

農業のための農地としての利用をしていこうという農地なので、農地以外の利用を制限している点が特徴です。
農地以外の利用をする場合は、農振除外申請を行う必要があります。

一般的には、市街化調整区域にあることが多いですが、ごくまれに、市街化区域でも青地指定の場合があります。

白地とは

農地で言う白地とは、「農業振興地域内農用地区域外農地」のことです。
上記の青地に対して、一般的には「白地」(しろぢ・しろち)というふうに呼ばれています。

集団での農地の利用性が低いなど、青地としての指定がされていません。
青地と比べると、農地転用のハードルがゆるくなっている点が特徴です。
農地以外の利用をする場合は、農振除外申請は不要ですが、農地転用許可申請が必要となります。

農地その他のポイント

農地の移転の効力発生日は、届出の場合、受理日ではなく、届出日

農地を移転する場合、市街化区域内であるのに、明らかに評価額が低い場合(原則、市街化区域内の農地は宅地並みに課税されていることが通常である。)は、生産緑地に該当するかを確認することが必要である。
(例えば、500㎡以上あるのに、数千円しか課税されていない場合などは、要注意となる)
その場合には、必ず近傍宅地の評価で登録免許税を出す必要があるため注意。

農地の売買、農地転用の届出書に現況「宅地」と記載されていた場合、事前に宅地評価する必要があるか要確認
(法務局により取り扱いが異なる)

評価の課税地目に宅地介在田と記載されている場合で、その年に地目変更登記が完了していれば、農地転用書類不要
登録免許税は近傍宅地で計算して出すことになる。

農地について、登記地目が宅地でも、評価証明書の現況地目が田・畑の場合は、農地転用の許可書が必要となるため注意が必要。なお、現況によっては不要となる場合もあるので、要確認。

 

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