株主リスト

商業登記改正と株主リスト

商業登記規則改正により、今後は、会社登記申請(商業登記申請)の際に、株主リストの添付・提出が必要となります。

① 登記申請書の附属書類の閲覧に際し,従前は,申請書に利害関係を明らかにする事由を記載するとされていたが,商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)第21条が改正され,附属書類の閲覧の申請書に利害関係を証する書面の添付が求められることとなった。
また,登記申請書の附属書類の閲覧の申請人は,その住所及び閲覧する部分を記載することとされた。
② 同規則第61条が改正され,登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には,真実でない登記の防止,事後的に決議の有効性等を検証可能とすること,法人の透明性を確保し,法人格の悪用を防止すること等を目的として,いわゆる株主リストの添付が求められることとなった。

株主リストとは

商業登記申請の際に,登記すべき事項につき,①株主又は種類株主全員の同意を要する場合,②株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合に,申請書に添付すべき,以下の事項を証明する書面である。

①株主又は種類株主全員の同意を要する場合
a.株主全員の同意を要する場合
証明書に記載すべき事項は,「株主全員の氏名又は名称」「住所」「各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあっては,株式の種類及び種類ごとの数を含む。)」「議決権の数」である。
b.種類株主全員の同意を要する場合
当該種類株主全員について,上記 a.と同様の内容が証明書に記載すべき事項である。

証明書の記載例は、法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html)にも公開されています。

株主リストの添付が必要となる場合

1.登記すべき事項につき、株主全員の同意を要する場合
2.登記すべき事項につき、株主総会の決議を要する場合
株主総会議事録を添付する登記のすべてで必要となる

株主リストの添付について

商業登記申請の際に,登記すべき事項につき,株主又は種類株主全員の同意を要する場合。②株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合(会社法第319条第1項(同法第325条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があったものとみなされる場合を含む。)。に申請書に「株主リスト」を添付する必要がある。
なお,特定目的会社登記規則及び投資法人登記規則に本改正商業登記規則が準用されていることから,特定目的会社(資産の流動化に関する法律)及び投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)についても法人登記申請の際に同様の書面を添付する必要がある。

株主リスト改正の施行日

株主リストの改正はいつからでしょうか。
施行期日は平成28年10月1日(商業登記規則等の一部を改正する省令附則1(平成28年4月20日付官報第6760号3頁))。
同年10月3日登記申請分から適用となる。

平成28年10月1日以前の決議の株主リスト

施行日以降になされた登記申請については,一律に同一の添付書面に基づき登記されることが相当であるとし,経過措置を置かないこととしている。
この点は,商業登記規則等の一部を改正する省令附則2(平成28年4月20日付官報第6760号3頁において「この省令の施行前にした登記の申請については,この省令による改正後の商業登記規則第六十一条第二項又は第三項(これらの規定を他の省令において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず,なお従前の例による」と記載されていることからも読み取れる。
そのため,以前に株主総会において決議がなされていたものの,登記を申請することを失念していた場合には,株主リストの添付は必要となる。

株主名簿と株主リストの違い

今回改正の商業登記規則第61条2項及び3項における,いわゆる「株主リスト」とは,会社法第121条の「株主名簿」とは同一ではなく,「株主名簿」のうち主要な株主に関する情報が記載されたものであり,登記申請の添付書類として提出されるものである。
また,改正後の商業登記規則第61条第3項では「株主リスト」という文言が記載されているわけではない。

因みに,会社法第121条の「株主名簿」においては「株主の氏名又は名称及び住所」「保有する株式の数」「株式取得日」が記載事項であり,さらに株券発行会社の場合には「株券番号」も記載事項とされている。一方,株主リストには,「議決権の数」,「議決権割合」も記載事項とされており,その記載内容が異なる。

なお、議決権数第10位の株主全員の記載が必要となる。
保有議決権数が同数の株主が複数いる場合は,同順位株主全員を記載すべきであり,上位となる10名の株主が11名以上となる場合は,その11名以上の数の株主を記載することになる。

いつの時点の株主を記載するか

株主総会において議決権を行使することが出来る株主を記載すべきであり,基準日を定めた場合は基準日における株主を記載することになる。
基準日を定めなかった場合には株主総会当日の株主となる。

株主を把握していない場合

「株主リスト」は,株主名簿の記載等により会社が把握している情報をもとに作成される。
法務省は,適法に株主総会が開催され,その旨の議事録が作成されていながら,「株主リスト」のみ作成できないという事態は想定し難いと考えているようであり,例えば,登記申請を懈怠していた事案において,株主総会時の株主が判明しないなどと記載した上申書を添付することによる救済措置は検討していないようである。
そのため,株主リストの作成ができない場合には,登記申請は却下されるものと考えられる。

したがって,現在の株主の氏名等をもとに,過去の株主総会までに行われた株式の譲渡や相続の状況を確認の上,株主総会時の株主の情報の把握に努める必要がある。なお,株主の情報の把握に当たっては,税務署において,確定申告書の閲覧をし,その別表2を確認することも有益と考えられる。

株主総会議事録の援用

株主総会議事録等の内容として「株主リスト」の必要的記載事項が記載されている場合,当該記載を援用することができるかどうか。
この点については、援用することができると考えられる。100%子会社や株主が特定少数である中小企業の実務としては,株主総会議事録の定番の記載内容として「株主リスト」の必要的記載事項を網羅しておくとよいであろう。
逆に,閲覧申請者の利害関係による閲覧可能部分(商業登記規則第21条第2項第3号)が株主総会議事録にのみ及び,「株主リスト」には及ばないこともあり得るので,株主総会議事録とは別に書類を作成する方がよいとも言える。

株主に相続が発生している場合

株主に相続が発生している場合に,「株主リスト」にはどのように記載しますか。
「株主リスト」にどのように記載すべきかは,対象となる株主総会の開催に当たり,当該会社が誰を株主として取り扱ったのかに従い記載することとなる。
株主に相続が発生し,遺産分割協議が未了である場合,当該株主が所有していた株式は,共同相続人の共有となるから,株主の氏名及び住所としては,当該共同相続人全員の氏名及び住所を列挙することになる。

株主が所在不明

株主の現在住所が不明(株式会社が株主に対してする通知又は催告が長期にわたって継続して到達しない)である場合には,住所はどの
ように記載しますか。
株式会社から「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査依頼があった場合,職務上請求用紙を使用することができますか。

株主の現在住所が不明であったとしても,株式会社が情報として把握している住所(株主名簿に記載されている住所)を記載すればよい。株式会社は,株主リストの作成のために,敢えて調査する必要はない。依頼者である株式会社において,戸籍法等の第三者請求の要件を満たさないと考えられるので,職務上請求用紙の使用は,不適切な事案である。

株主リストの作成者

「株主リスト」の作成者(記名押印をすべき者)は,登記申請を行う株式会社の代表者であり,登記所届出印の押印が必要(平成28年6月23日付法務省民商第99号民事局商事課長依命通知)。
数年前の株主総会議事録を添付する場合であっても,「株主リスト」の作成者(記名押印をすべき者)は,登記申請を行う現在の代表取締役である。

複数の登記事項と株主リスト

複数の株主総会により,複数の登記事項が発生し,これらを一括して登記申請する場合,それぞれの株主総会議事録ごとに株主リストが必要か?
「株主リスト」に記載すべき株主は,当該株主総会において議決権を行使することができるものをいうから,複数の株主総会により,複数の登記事項が発生し,これらを一括して登記申請する場合には,登記すべき事項ごとに当該株主総会において議決権を行使することができる「株主リスト」を添付しなければならない。ただし,一の株主総会において,複数の登記すべき事項について決議された場合において,各事項に関して株主リストに記載すべき事項が同一である場合には,その旨注記して,一の株主リストを添付すれば足りるとされている。

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