共有の不動産で住所変更・相続と抵当権抹消登記の単独申請の可否
抵当権抹消登記の申請について、不動産が共有の場合は、共有者の1人から抵当権の抹消の登記を申請することができます(民法252条 保存行為)。
しかし、共有者のうちの1人が引っ越し(転居)して住所が変更していたり、共有者の1人が死亡して相続が発生したりしている場合にも、単独で抵当権抹消登記ができるのかが問題となります。
所有権登記名義人表示変更登記(名変)や、相続登記を経ないと、抹消申請できないのではないかという疑義があるためです。
この点につき、以下の見解があります。
事項別 不動産登記のQ&A210選
「事項別 不動産登記のQ&A210選 7訂版」、「窓口の相談事例にみる事項別不動産登記のQ&A200選 6訂版」において、共有者の1人が死亡した後に、弁済により抵当権を抹消する場合の事例が記載されています。
この場合、死亡した共有者の1人の登記上の住所氏名を記載し、申請人となる共有者の1人から単独で抹消登記申請ができるとされています。
名古屋法務局・愛知県司法書士会 法司協議
名古屋法務局・愛知県司法書士会 不動産権利登記研究会協議結果集(平成29年3月発行)の1頁にも、この事例が掲載されています。
月刊登記研究NO.463号の質疑応答に「弁済を原因とする抵当権抹消登記の申請人は,共有者のうちの1人から共有者全員のために登記義務者と共同申請でできる。」とされるものがあるが,申請しない他の共有者が登記簿上の住所から転居していたり,死亡後に弁済などしていたとしても,結論に影響はないものと考えるがいかがか。
[協議結果]意見のとおり。
参考
- 日本法令「窓口の相談事例にみる事項別不動産登記のQ&A200選 6訂版」Q118
- 月刊登記研究NO.543質疑応答
また、別途名古屋法務局に照会を行った結果も、問題ないとの回答でした。
なお、名古屋法務局管内の取扱いですので、愛知県外の法務局によっては取り扱いが異なる場合がありますので、事前にご確認ください。