お金の貸し借りを書面でする金銭消費貸借の要物性とは?
- 相続手続き(遺産分割・預貯金・不動産)
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金銭消費貸借の要件・要物契約(債権債務)
先日、ある金融機関(以下、A銀行)から令和3年8月●日を設定日とした
次のような抵当権設定契約書を登記申請の登記原因証明情報として受領しました。
設定契約書の内容の一部は以下のとおりです。
第1条(抵当権の設定)
担保提供者は、債務者が令和3年7月△日付金銭消費貸借契約
(ただし、令和3年8月●日を借入日とする要物契約)に基づきA銀行に対し負担する債務を
担保するため後記物件のうえに順位後記の抵当権を設定しました。
ここで、本件が要物契約になるのか、書面による諾成契約となるか?
そして登記すべき原因はそのようになるか?という件につき、改正民法をもとに紐解いてみたいと思います。
民法条文の該当箇所は次のような記載となっています。
消費貸借
条文では、
第587条
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって
返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、
その効力を生ずる。
書面でする消費貸借等
改正民法
改正民法第587条の2第1項
前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、
当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、
相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって
返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
論点は…
第587条は、従来通り消費契約は、
相手方に物を渡したときに契約の効力が生じる要物契約であると定義していますが、
第587条の2で書面でする消費貸借は、諾成契約であることが、記載されています。
これを踏まえて、書面でする消費貸借契約書に、当該契約が、
要物契約であると載っていたらどうなるかというのが、今回の論点でありますが、
民法には、契約自由の原則がありますので、その条文を見てみます。
任意規定と異なる意思表示
91条のご紹介
第91条
法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、
その意思に従う。
やや難しい表現ですが、契約内容は当事者が自由に決めれるという事です。
(もちろん、公序良俗に反することを除いてですが。)
また法律には、契約自由の原則を修正するものとして、強行法規というものがあります。
借地借家法や労働法規などです。これは、家主と借家人、使用者と労働者など力関係に差があるので契約自由の原則を貫くと借家人や労働者が不利な契約を締結せざるをえない状況に追い込まれることを防ぐために存在しています。
強行法規に反する契約部分は、無効です。
以上により、今回のA銀行の抵当権設定契約書の金銭消費貸借の要物契約の部分が
有効か無効かを判断する基準は2つです。
- ①公序良俗に反するか。
- ②民法第587条の2は、強行法規か。
現時点での判例はないと思いますので、ここからは、当方の私見となりますが、当該設定契約は、①公序良俗に反しない。②要物契約の消費貸借契約を書面で締結することにつき、借主の権利が侵害されるとは考えにくいため、強行法規とすることに無理があります。
よって書面でされた契約書の要物契約の特則は、有効であり、原因日付は令和3年8月●日金銭消費貸借同日設定になると考えられます。ちなみにこちらの登記原因にて、設定登記の申請も無事に完了いたしました。
(担当:平石)
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