積水ハウスの「地面師」詐欺事件を司法書士の視点で見る
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積水ハウスの不動産詐欺 被害55億円
積水ハウスが分譲マンション用地取引の詐欺事件で、実質的被害が55億5千万円になることが、平成30年3月6日の調査報告書で発表されました。
この詐欺事件は、不動産業界や司法書士業界の間でも話題になっていますが、この地面師による詐欺事件について、司法書士の視点から経緯を見ていきます。
詐欺事件の経緯
不動産 東京都品川区西五反田の土地建物
当事者
- 所有者と称する者 A氏(のちに、偽物と判明)
- 中間者 X社(A氏の知人の仲介者が実質的に経営する会社)
- 買主 積水ハウス
時系列
平成29年4月24日 A氏とX社が売買予約契約
平成29年4月24日 X社と積水ハウスが売買予約契約
平成29年4月24日 所有権移転請求権仮登記
平成29年6月1日 売買代金の残代金支払い
平成29年6月1日 所有権移転登記申請
平成29年6月9日 登記申請却下
今回の地面師詐欺事件のポイント
今回の積水ハウス地面師事件のポイントを検討していきます。
仮登記の申請
この不動産取引における特徴は、売買予約による所有権移転請求権として仮登記を申請しているという点です。
通常、不動産の売買による名義変更・所有権移転登記には、権利証(登記済証・登記識別情報)が必要となりますが、
仮登記の場合は、権利証は必要ありません。
仮登記の申請に必要な書類
不動産の所有権移転の仮登記を申請するために必要な書類は、印鑑証明書(3か月以内)と、それに対応する実印です。
印鑑証明書は、偽造・盗難・改変等により取得したと考えられます。
4/24の時点で、まずは仮登記を申請して通っていることで、関係者や取引に立ち会う司法書士の注意の目を緩ませることを狙ったのかもしれません。
権利証の代わりとなる本人確認情報
所有権移転の仮登記では権利証は必要ありませんが、本登記の際には、権利証が必要となります。
権利証がない場合は、資格者代理人等による「本人確認情報」を提供するか、事前通知の手続きによることになります。
通常、不動産の売買・決済において事前通知の手続きによることはありませんので、本人確認情報の手続きで進められたと考えられます。
積水ハウスの報告書においても、「A氏のパスポートや公正証書等による書面での本人確認」の提供があったとされています。
積水ハウスの担当司法書士も、A氏の偽造パスポートについては本物と信じたとのことです。
また、公証役場で公証人による本人確認情報が作成した上で、登記申請の手続きを進めたと想定されます。
司法書士が詐欺を見抜くポイント
積水ハウスの地面師詐欺事件について、司法書士の間では、司法書士会からの情報が早くほしいという声が多く上がっていますが、愛知県司法書士会でもまだ事実関係を把握しきれていないようで情報が出ていません。
このような詐欺事件に遭わないために、司法書士が気を付ける対策を検討します。
印鑑証明書の偽造を疑う
印鑑証明書の専用紙には、偽造防止措置が施されています。
- 透かしインキ…光にかざしてみると桐の模様が透かしのように、白く透けて見えます
- コピー牽制…コピー機で複写すると、隠れていたCOPYという文字が現れます。
- 連続番号(天地2方向)…用紙ごとに番号が連続で印刷されています。
印鑑証明書の偽造に関する詳細は、法務省のページで確認できます。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji77-2.html
最近は、コンビニでの印鑑証明書を発行することもできますが、コンビニ印鑑証明書は特殊な機械を使わないと偽造を見破ることが難しくなっています。
不動産の売買手続きでは、コンビニ印鑑証明書の場合は事前に確認するなどの対策も必要でしょう。
権利証紛失時の本人確認情報の作成
権利証を紛失している場合の本人確認情報は、司法書士自らの責任で行うべきです。
司法書士が本人確認情報を作成する際の面談では、本人であることを間違いなく確認するために、時間をかけて綿密な調査を行います。
公証人が作成する本人確認情報も有効ですが、公証役場の対応にもバラつきがあり、身分証明書と印鑑証明書だけ確認できれば本人確認情報を作成する公証役場もあります。
登記簿上の住所地での面談
不動産売買の取引に怪しい点があったら、一番確実な方法は、所有権登記名義人の登記簿上の住所地での面談を行うことです。
自宅などの住所で本人と面談をして本人確認を行えば、詐欺に遭遇するリスクは相当抑えることができます。
参考資料
積水ハウス株式会社 分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告
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