空き家の相続放棄と寄付

空き家の相続放棄と所有権放棄

父が死亡し、相続遺産は、預貯金、中山間部にある空き家となった実家とその周りの田畑です。
私は、既に名古屋市内の都市部に自宅があり、実家に戻る予定もありませんので、実家と田畑については相続放棄しようと思っていますが、可能でしょうか。
もし、相続放棄することができないのでしたら、国か地元の自治体に寄付したいと思いますが、可能でしょうか。
また、他に手放す方法はありませんか。

空き家の相続放棄・寄付

ご相談のように、山林や田んぼ、戻る予定のない実家などを相続したくないというご相談は多くあります。
しかし、遺産のうち、一部の相続財産のみ(例えば不動産のみ)についての一部相続放棄をすることはできません。
国や自治体に、寄付を申し込むこともできますが、申込先の国や自治体の受け入れの意思がなければ、一方的に寄付することはできません。
不動産の所有権の放棄は、権利濫用に当たるなどする場合には認められず、また、国名義に登記することはできないでしょう。

空き家の相続放棄

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなすとされている(民法939条)。
したがって、遺産ごと(相続財産ごと)に、相続を放棄することはできない。実家の空き家についてだけ相続放棄をしたいということは認められない。

なお、生前贈与または死因贈与により預貯金を贈与あるいは遺贈し、不要の不動産は相続発生後に相続放棄することについては、信義則に照らして死因贈与が相続債権者に対抗できないとする最高裁判例もある(限定承認の事例:平成 10 年 2 月 13 日最高裁判所第二小法廷判決)。
空き家の増加を予防するためにも、できるだけ生前に話し合いをして検討しておきたい。

空き家の寄付

国や自治体に、空き家についての寄付を申し込むこともできるが、民法上は、寄付も贈与契約の一種であるため、申込先の国や自治体の受け入れの意思がなければ寄付は成立しない。
一部の自治体では、寄付を受け入れるための基準を設けているところもあり、その基準に該当する場合は、寄付が成立することもあるが、そのようなケースは必ずしも多くはない。

不動産の所有権の放棄

不動産の所有権も、民事実体法上は放棄の対象であり、その所有権を放棄すると無主の不動産として国庫に帰属するはずである。
しかし、この放棄が、権利濫用に当たるなどする場合には、所有権の放棄をすることは認められず、仮に、所有権の放棄が認められたとしても、所有権移転登記をして国名義にするためには、放棄者が単独で登記申請することはできず、原則どおり、国との共同申請となる。
通常、国がこのような登記申請に協力することは考えられないため、一般的には、空き家についての不動産の所有権を放棄して、国名義に登記することはできないと思われる。

所有権放棄の先例

神社所有地の崖地が崩潰寸前で、危険状態にあるため、国の資力によって危険防止を計るため思料しても、本不動産の所有権を放棄することはできない(昭和41 年 8 月 27 日付民事甲第 1953 号民事局長回答)。
土地の所有権を放棄した者が単独で(国との共同申請によらず)、国名義への所有権移転登記を申請することはできない(昭和 57 年 5 月 11 日付民三第 3292 号民事局第三課長回答)。

空き家の事前対策

ご相談のように、既に不要となってしまった空き家を手放したいと考えても、買い手、貰い手が見つからない場合は、対応策を見つけることは相当困難となる。
よって、日頃から、空き家の維持管理・解体等について検討・話し合いをしておき、早めに売却の意思表示等を隣地所有者または不動産業者に明らかにしておくなどして、空家化を予防し、対応策を準備しておく必要がある。

相続と空家

空き家が発生する要因の一つとして、大きなものは相続です。
たとえば、実家に両親が居住していて、父親が死亡したが、子供二人は遠方に自宅を構えているとき、実家については、引き続き居住することとなる母親の所有名義とすることで遺産分割の協議が成立し、その旨の相続登記のご依頼をいただくようなケースは多々あります。
このような場合、いずれ母親が亡くなったときは、実家が空き家となる可能性が高いということにも配慮して、話し合いをしたうえで、遺産分割協議を進めていくようにするとよいでしょう。
将来的に、空き家になった場合の管理・解体や売却について話し合い、空き家の維持管理のために準備をしたり、空き家になることを予防することが事前対策として重要だと考えています。
司法書士法人はらこ事務所では、空き家の管理や、解体手続き、売却についても、専門の不動産業者をご紹介可能ですので、一緒に進めていければと考えています。
 

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