成年被後見人が所有する空き家

成年被後見人名義の空き家

老人ホームに入居している叔父の認知症が重くなり、近所に住む私が成年後見人に選ばれました。
叔父の住宅を空き家のまま放置していたところ、老朽化が進み通学路に向かって倒壊しそうな状態となっています。
市からは、危険性が高いため早く取り壊すよう指導を受けました。
しかし、叔父は現金預金が少なく、取り壊す費用を捻出することができません。
どうしたらよいでしょうか。

成年後見人と空き家

特定空家等に該当すると判断された上で指導を受けた場合、成年後見人が費用を立て替えてまで取り壊す必要はありません。
しかし、成年被後見人の資産に応じ、管理者として、とり得る方法で適切に管理する必要があります。

費用面から、取り壊しや修繕が難しい場合、当該空き家(敷地を含む)を隣地所有者に売却することも考えられます。
成年後見人は、空き家の管理、処分を含めて、被後見人の財産の管理、処分をする代理権を有します。
ご相談の空き家は、成年被後見人の居住用不動産に当たるため、家庭裁判所の許可がなければ、取り壊しや売却をすることはできない点には注意してください。
なお、取り壊しについての補助制度を設けている自治体もあります。

空家特措法上の指導

空家特措法上の指導等には、
・一般的な指導(特措法12条)
・特定空家等に対する措置としての指導(特措法14条1項)
の二種類がある。

前者は、空家等の適正管理に関する一般的な連絡、要請、注意喚起であり、それに従わない場合であっても、空家特措法上の強制措置が執られることにはならない。

後者は、特措法第14条に規定する特定空家等に対する措置としての助言又は指導であるため、これに従わない場合は、空家特措法上の強制措置が執られることもある。
この事例では、後者の指導であるため、指導に沿った速やかな対応が求められる。

特定空家等とは

特定空き家とは、空家等のうち「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態その他生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」と定義されており(特措法第2条第2項)、市町村が認定するものを特定空家等という。

空き家所有者等と成年後見人

空家特措法では、空家等の所有者又は管理者を「所有者等」というが、この事例では、成年後見人は管理者に当たるため、所有者等に該当することになる。

空き家の管理者の責任

空家等の所有者等には、民法上の管理責任を負うほか、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとするという特措法上の努力義務も課せられている(特措法3条)。
したがって、一般的な指導、特定空家等としての指導の有無に関わらず、空き家を適正に管理しなければならない。

空き家について成年後見人の権限

成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する(民法853条1項)。
したがって、家庭裁判所の監督のもとで、成年後見人の判断で成年被後見人のために代理人として、その空き家を管理し処分することができる。
費用面から、取り壊しや修繕が難しい場合、空き家の敷地も含めて、隣地所有者等に売却することも考えられる。

空き家の処分(居住用財産)と空き家特措法の関係

成年後見人は、成年被後見人の居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分(取り壊しを含む)をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(民法853条の3)。
居住用不動産である空き家が特定空家等と判断され、取り壊すように指導を受けたとしても、民法第853条の3の適用を受けるため、成年後見人は、家庭裁判所の許可を得なければ、処分をすることは許されない。
 

空き家の関連ページ

空き家の管理と相続放棄

よく見られているページ

相続の手続き

相続不動産売却プラン

遺言書作成

過払い金と債務整理

 
 

司法書士アクセスブックのご案内

 
皆さんに司法書士をもっと身近に感じてもらうため、日本司法書士会連合会が作成した手引書です。画像をクリックするとPDFファイルがダウンロードできます。

『放っておけない空き家の話』(PDFファイル)

 
「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことを受けて、空き家問題について解説するとともに、実際に寄せられた相談事例を紹介しています。

『司法書士のことがわかる本』(PDFファイル)

 
司法書士の業務紹介では、「家・土地」「相続」「日常生活のトラブル」といった項目ごとに具体的な相談ケースの解説や司法書士がお手伝いできることについて、司法書士の取り組み紹介では司法書士会が行う各種法律相談や社会貢献事業等について紹介しています。

『司法書士に聞いてみよう!』(PDFファイル)

 
「遺言」「会社設立」「成年後見」「相続登記」「司法書士になりたい」といった身近に起きる法律問題に対して司法書士ができることを漫画でわかりやすく説明しています。

『困っていませんか?くらしの中の人権』(PDFファイル)

 
司法書士がくらしの中の人権問題に関して、支援していること・支援できることをわかりやすく紹介しています。

※日本司法書士連合会WEBサイトより引用

 
司法書士法人ひびきグループへのお問い合わせ
相続のこと、家族信託のこと、債務整理のこと…
ご不明な点やお困りのことがございましたら、お電話またはメールでお気軽にご相談ください。手続きの費用のこと、どのくらい日数がかかるのかなど、どんなことでもかまいません。○○のことで相談したい、というだけでも結構です。
お問い合わせいただいたご相談につきましては、親身に、丁寧にご対応させていただきますので、遠慮せずになんでも聞いてください。相談無料、土日祝日・夜間も営業しております。
お問い合わせ、お待ちしております。

相談専用ダイヤル☎ 052-890-5415


(年中無休 朝9時〜夜8時 ※土日・夜間はご予約をお願いいたします)

 

 

この情報をシェアする

空き家の相談は名古屋の司法書士はらこ事務所へ

司法書士法人ひびきグループ|名古屋市緑区・天白区の相続・家族信託・債務整理

メールのお問い合わせ電話のお問い合わせ