任意後見契約と認知症
- 2016/9/25
- 2019/4/22
任意後見と成年後見(法定後見)
日本人の平均寿命が長くなっていく中で、健康に生活できる健康寿命や、成年後見、また生前対策としての任意後見といった制度が、近年クローズアップされるようになってきました。
特に、任意後見については、成年後見(法定後見)の不満な点をクリアすることができる可能性がありますので、ご紹介します。
任意後見契約とは
任意後見契約とは、本人が契約の締結に必要な能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見する人(本人の代わりとなって手続をする人)を決めておく制度です。
今はお元気でも、物忘れが多くなってしまったり、認知症になってしまうと、自分で何か契約を結んだり、財産の管理をしたり、また法律的な協議をすることができなくなってしまいます。
そうなると、おじいちゃん、おばあちゃん名義の口座のお金を動かすことができない、不動産売却の手続を進めることができない、など本人にとっても、ご家族にとっても困った事態となりかねません。
そのときのために、本人と信頼できる人との間で、何かあったときに備えて後見契約を結んでおくことができます。
この後見契約のことを、任意後見契約といいます。
任意後見と法定後見(成年後見)の違い
判断能力が衰えてしまった後にも、裁判所に後見を申し立てること(法定後見といいます。)もできますが、以下のような違いがあります。
任意後見のメリット・デメリット
- 本人が自由に後見人を選ぶことができる
- 後見の内容を自由に決められる
- 後見人への報酬を自由に決められる
- 必要なタイミングで後見を始めることができる
法定後見のメリット・デメリット
- 家庭裁判所が後見人を選ぶ(弁護士、司法書士などの第三者が選ばれることが多い)
- 後見の内容は家庭裁判所が決める
- 後見人への報酬は家庭裁判所が決める
- 後見を始めるのに時間がかかる
任意後見の最大のメリット
任意後見と法定後見の違いとして、最も大きいことは、
任意後見の場合、
- 後見人を自由に選ぶことができる=家族が後見人になることができる
- 後見の内容を自由に決めることができる
という点です。
法定後見は、本人の利益を最も優先するという考え方から、近年後見人の財産の乱用の問題もあり、家族などがなかなか後見人に選ばれにくい傾向にあります。
この場合、弁護士や司法書士が後見人となり、裁判所がその報酬額も決定します。
また、例えば、本人が認知症になり、住んでいた家を売って、老人ホームなどの施設に入居しようとする場合、
任意後見であれば、自己の居住用不動産の売却権限を後見人に与えていれば、後見人が本人に代わって手続することが可能ですが、
法定後見の場合は、裁判所の許可を得なければ売却手続をすることができません。
お金が必要だから売却したいのに…という場面でも、法定後見はさまざまな制約があったり、多くの時間がかかってしまうのが現状です。
任意後見契約の準備
判断能力が衰えてしまった人の財産管理について、裁判所は、本人の利益を最優先するので、手続きという面では複雑になってしまいます。
「おばあちゃんもずっと、自分に何かあったらこうしてくれって言ってたのに…」
という場合でも、それが公的に証明できないので、裁判所は簡単に認めてくれません。
任意後見契約は、判断能力が十分にあるうちに行う手続きですので、後見が開始した後も、契約した時の本人の意思が尊重されます。
任意後見契約書の手続き・公正証書
任意後見の契約書は、「公正証書」という厳格な方式での書面で作成します。そのため、法律上もしっかりとした証明にもなります。
それによって、本人や家族にとって、最良の手続方法を選択することができます。
平均寿命と健康寿命
お客様にとって、このあと実際に、後見が開始することになるかはわかりません。
しかし、日本は特に平均寿命が大幅に伸びており、平均寿命と健康寿命の差が大きくなっているのが現状です。
男性・女性別の平均寿命・健康寿命
男性
平均寿命 79.55歳
健康寿命 70.42歳
差 9.13年
女性
平均寿命 86.30歳
健康寿命 73.62歳
差 12.68年
将来への備えとしての任意後見
ここでいう健康寿命とは、日常生活に制限のない期間です。
平均寿命と健康寿命の差である期間は、日常生活に制限のある不健康な期間ということで、男性で9.13年、女性で12.68年もあることになります。
体に不自由が起こるようになるだけではなく、認知症で物忘れが多くなったり、ボケてしまって何も手続きができなくなったりするご家庭は、年々増えています。
生前の相続対策として、遺言書とあわせてご相談いただくケースもとても多いです。
任意後見解約は、将来への備えの一つとして、一度ご本人とご家族とで話し合ってみてください。
任意後見・成年後見(法定後見)の費用
任意後見と成年後見手続きに関する費用につきましては、相続料金プランのページをご覧ください。
なお、任意後見契約の手続きには公証人手数料(公証役場)や、成年後見の申立てには裁判所の実費等が必要となります。
任意後見の関連ページ
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