遺言書の種類
- 2015/7/7
- 2019/4/24
遺言書の種類
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言という普通方式の遺言と、
急を要する場合の特別方式の遺言があります。
それぞれ、形式や要件を見ていきましょう。
普通方式の遺言
普通方式の遺言とは、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類の形式の遺言です。
民法967条以降の条文に規定されています。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言書の全文を自分で自署し、作成する遺言です。
一番簡単・手軽に、費用もかけずにできる遺言です。
全文を自署する必要があり、パソコン・ワープロで打った文書は無効です。
手軽に作ることができるという反面、要件を満たさないと遺言書を書いた意味がなくなるというリスクがあります。
また、遺言書の保管場所や、偽造・紛失等の恐れもあるため、注意が必要です。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言です。
公証人のほか、証人2名が立会い、確実な遺言書を作成します。
遺言公正証書の原本が、公証役場に保管されるため、紛失、改ざんのリスクがありません。
自筆証書遺言と比べると、公証人手数料や証人依頼費用などの費用が必要となります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自分で作成・封印した遺言書を公証役場に持ち込み、公証人に証明してもらう遺言です。
公証人のほか、証人2名が立会います。
秘密証書遺言では、公証役場で、間違いなく遺言者本人のものであるということを証明でき、遺言書の中身を誰にも知られることなく、遺言書を作成することができます。
ただし、公証役場では、遺言書の内容を確認するわけではありませんので、遺言書の内容に不備があれば、無効になってしまうリスクがあります。
秘密証書遺言は、全国的にも作成される件数は非常に少ないようです。
特別方式の遺言
特別方式の遺言とは、病気などの事情により、死が差し迫っているときや、隔絶された場所など特別な状況にいるときに作成する遺言の形式です。
危急時遺言として、一般危急時遺言(死亡の危急に迫った者の遺言)と、船舶危急時遺言(船舶遭難者の遺言)
隔絶地遺言として、一般隔絶地遺言(伝染病隔離者の遺言)と、船舶隔絶地遺言(在船者の遺言)
があります。
危急時遺言方式による遺言
一般危急時遺言(一般臨終遺言)
一般危急時遺言とは、病気・疾病等により、死期が迫っている人が行う遺言です。
証人3人以上の立会いで、そのうちの1人に、遺言の趣旨を伝えて(口授)、作成します。
船舶危急時遺言(難船遭難時遺言)
船舶危急時遺言とは、船が遭難した場合に、船舶内で死期が迫っている人について行う遺言です。
証人2人以上の立会いで、口頭で遺言が可能です。
隔絶地遺言方式による遺言
一般隔絶地遺言(伝染病隔離者の遺言)
一般隔絶地遺言とは、伝染病により、隔絶地(交通を絶たれた場所)にいる者が行う遺言です。
警察官1人と証人1人以上の立会いで、遺言書を作成することができます。
船舶隔絶地遺言(在船者の遺言)
船舶隔絶地遺言とは、船舶内にいる者が行う遺言です。
船長または事務員一人及び証人2人以上の立会いで、遺言書を作成することができます。
参照条文(民法)
危急時遺言方式
(死亡の危急に迫った者の遺言)
976条 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
(船舶遭難者の遺言)
979条 船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3 前二項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
4 第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。
隔絶地遺言方式
(伝染病隔離者の遺言)
977条 伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
(在船者の遺言)
978条 船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
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