相続放棄と遺産分割協議の違い
- 2015/5/5
- 2019/4/3
遺産分割協議で財産放棄をした場合
遺産分割協議書の中で、
「財産を相続しないかわりに、借金も一切相続しない」
「財産も負債も長男が相続する」
と書いてある場合があります。
この場合、長男が借金も含めてすべて相続することになりそうですが、そうはなりません。
遺産分割協議で決めただけでは、借金の支払いを免れることはできないのです。
遺産相続の場合、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、
借金・負債・保証債務などのマイナスの財産も自動的に相続することになります。
身内である共同相続人の間で、借金などの負債は長男が相続すると決めても、
債権者に主張(対抗)することはできません。
債権者から借金を支払えと連絡がきたら、支払う義務があります。
もちろん、債権者が負債の相続の取り決めについて同意すれば問題ありませんが、
そのようなことは期待しないほうがよいでしょう。
相続放棄と遺産分割協議の違い
相続放棄と遺産分割協議の違いは、以下のとおりです。
相続放棄
手続き | 家庭裁判所に相続放棄の申述をする |
効果 | 最初から相続人ではなかったものという扱いになる(家庭裁判所での認定) |
負債 | プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない |
遺産分割協議
手続き | 共同相続人の間で負債の相続について取り決めをする(遺産分割協議書を作成) |
効果 | 身内の間では有効だが、債権者に対しては主張できない(単なる身内での話し合い) |
負債 | 借金は免除されていないので、支払う義務がある |
大きな違いとしては、相続放棄の場合は、相続人としての地位がなくなり、
最初から相続人じゃないものとして取り扱われることになりますが、
遺産分割協議の場合は相続人としての地位を失うわけではないため、
相続債務の負担義務はなくならないという点です。
他の相続人が相続放棄をしてくれた
「今回の相続手続きについては、長男にすべて任せており、相続放棄もしてもらった」
というケースがありますが、ほとんどの場合は、遺産分割協議書や相続分譲渡証明書にハンコを押しただけで、相続放棄手続きはされていないということがほとんどです。
相続放棄をするためには、「家庭裁判所」に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。
相続人として借金を背負うことにもなりかねませんので、任せっぱなしにしないで、しっかり手続きを行うことが重要です。
遺産分割協議後に相続放棄ができるか?
遺産分割協議を行った後に、相続放棄の手続きができるか、という点について
遺産分割協議を行うということは、自分が相続人であるということを認め、自分の相続財産を処分する、ということです。
相続財産を処分するという行為は、「法定単純承認」にあたるため、遺産分割協議をした後は、相続放棄ができなくなる可能性があります。
過去の裁判例の中では、「相続債務の存在につき誤信していた」などの事情がある場合、遺産分割後でも相続放棄ができる余地があると判断した判例もありますが、注意が必要です。
相続放棄の可否については、相続放棄の事例もあわせてご覧ください。
相続放棄・遺産分割の関連ページ
相続放棄の事例(3ヶ月経過後の相続放棄)
相続放棄と相続分の譲渡の違い
皆さんに司法書士をもっと身近に感じてもらうため、日本司法書士会連合会が作成した手引書です。画像をクリックするとPDFファイルがダウンロードできます。
『よくわかる相続』(PDFファイル) 「相続の基本」「遺言」についてなど項目ごとに、具体的な相談ケースと解説を掲載しています。 | 『司法書士のことがわかる本』(PDFファイル) 司法書士の業務紹介では、「家・土地」「相続」「日常生活のトラブル」といった項目ごとに具体的な相談ケースの解説や司法書士がお手伝いできることについて、司法書士の取り組み紹介では司法書士会が行う各種法律相談や社会貢献事業等について紹介しています。 |
『司法書士に聞いてみよう!』(PDFファイル) 「遺言」「会社設立」「成年後見」「相続登記」「司法書士になりたい」といった身近に起きる法律問題に対して司法書士ができることを漫画でわかりやすく説明しています。 | 『困っていませんか?くらしの中の人権』(PDFファイル) 司法書士がくらしの中の人権問題に関して、支援していること・支援できることをわかりやすく紹介しています。 |
※日本司法書士連合会WEBサイトより引用
相続のこと、家族信託のこと、債務整理のこと…
ご不明な点やお困りのことがございましたら、お電話またはメールでお気軽にご相談ください。手続きの費用のこと、どのくらい日数がかかるのかなど、どんなことでもかまいません。○○のことで相談したい、というだけでも結構です。
お問い合わせいただいたご相談につきましては、親身に、丁寧にご対応させていただきますので、遠慮せずになんでも聞いてください。相談無料、土日祝日・夜間も営業しております。
お問い合わせ、お待ちしております。
相談専用ダイヤル☎ 052-890-5415
(年中無休 朝9時〜夜8時 ※土日・夜間はご予約をお願いいたします)